前置き
Windows 8 は今回 8、8 Pro、8 Ent の 3 つのエディションがあり、8 Pro からは with Media Center という Media Center 付に変更できるのはもうご存知だと思います。
企業で使う場合には、ドメイン参加が条件になるので、8 Pro か Ent のどちらかを考える事になります。
Windows 7 では BitLocker を使おうとすると Ent 版である必要があったので、ライセンス価格的に Pro を選んで、 BitLocker をあきらめるという場合も多かったと思います。 しかし、8 では Pro から BitLocker が使えるので、なおさら Pro で必要十分と思われている方も多いかもしれません。
しかし、あえて Ent 版がお勧めという理由を書きたいなと思います。
さて、Windows PC を考えるときに、ハードウェアはリースで、イメージをその都度適用させて使っているという企業は多いと思います。 3 年 ~ 5年というスパンが多いように思いますが、この場合どうしてもリース時期に合わせる感じになります。
そのため、ある企業では 3 年リースだとして、部署によってリース開始時期が違う場合には、次のような状況だと思います。
IT 部門としては、コスト削減のために展開するなら一度に行ってしまいたいところなので、理想としては次のような形ですが
B 部署と C 部署はリース切れによる、PC リプレースが発生するので、新 PC での OS セットアップやユーザーデータ引き継ぎなど、PC 移行にかかるコストを考慮すると、現実としては次の形になっていると思います。
これによって導入時期が異なるので、サービスパックが出た場合に、C 部署の Win8 は最初からサービスパックが適用済み、A 部署の Win8 はサービスパックの適用方法を考える必要があるなど、運用保守の面で OS 環境が同じでないことは、IT 部門にとって難しい課題になります。
また、昨今進んでいる仮想化によって、シンクライアント化 ( Hyper-V を想定 )という話が出てくるかもしれん。 その場合も PC 移行と同じだけのコストがかかることになります。 また逆に、シンクライアントで運用していたものの仮想 OS ではパフォーマンの問題があるので、物理 PC に戻したいといった場合も同様の状況になります。
これを何とか解消できれば IT コスト削減につながり柔軟な運用ができるのにっという事になります。 実は Windows 8 の Ent 版にはこの状況を緩和できる機能変更が行われています。
Sysprep の新機能 「respecialize」
新機能というには微々たるもので、Ent 版の新機能としても紹介されていません。 今回 Windows 8 からは Sysprep で行われ��アクションが設定ファイル化され、フォルダに保存される形になりましたので、内容を見る事が出来ます。
%systemroot%\System32\Sysprep\ActionFiles
を見れば、その中に Respecialize.xml があります。 中を見ると PnP のやり直し用定義が含まれています。
これは実は Windows To Go (WTG) で使われる部分になっていて、WTG はいろいろな PC で動作する事が前提のため、ドライバーのロードし直しを行います。 そのため、PnP をやり直すのでこの項目が用意されています。 実はこの機能は少なくとも Ent 版であれば、WTG で以外でも機能します。
VHD 起動という選択肢
VHD 起動自体は Windows 7 から初めて入りました。 パーティションを新たに区切ることなく、別の Windows 7 を起動できるメリットや、バックアップをファイルごととればいいという便利さもありましたが、それ以外の用途ではなかなか利用が限られていたのが現実でした。 しかし、Windows 8 では Sysprep の respecialize の機能により、VHD 起動として設定した VHD を丸ごと他の PC に移動できるメリットを享受できます。
例えば、上記例で言えば、B 部署に Windows 8 を導入、その 1 年後に PC リースのためのリプレースが発生しても、利用した VHD を丸ごと移動し、起動設定を行えば初回起動時に PnP が走り、Windows Update からドライバーをダウンロードして利用できるようになります。
あらかじめ利用していた環境で Sysprep を行う必要もありません。 ドメインに参加したままで移動ができますし、TPM つきの BitLocker を使っていた場合に、移行先も TPM がある場合には、BitLocker を一時停止して移動すれば、移行先でも BitLocker が使えます。
Hyper-V 上の仮想 OS として動かす場合には、 VHD 自体にブートローダーを入れ込んで、VHD 内パーティションをアクティブにするだけで、Hyper-V 上に移動して同様にで利用できます。
この時、Hyper-V 上で RemoteFX を使って、ゲスト OS で RemtoeFX アダプターを利用する場合も Ent 版に限られます。 Pro 版では不明なデバイスとなり利用する事はできません。
逆もまた同様です。
注意:当たり前ですが、移動先、移動元の OS を起動した状態で、ネットワークに接続して同時使用しないようにしてください。 特にドメイン環境では厳禁です。 マシン名も SID もすべてそのままコピーなので、もともと使っていた PC からは速やかに VHD を削除して、その PC では起動できないようにします。
制限事項
- VHD 起動の制限事項で、Windows 7 から変わらず、休止状態が使えません。 そのため、Windows 8 での新機能一つである、高速起動の恩恵は受けられません。 また、ページ ファイルも VHD が入っている親パーティションか別のパーティションとなります。
- Windows 8 の VHD 起動は BitLocker を利用可能ですが、PagefileOnOSVolume が 1 に設定されても、VHD 内にページ ファイルは作れないので、この値を 0 にして、別の場所に作成する必要があります。
- PnP が可能なのはドライバーのみです。 ドライバーが入っている事が前提のサービスやアプリケーションが入っている場合には、正しく動かなかったり、著しいパフォーマンスの問題が発生します。
- PnP ドライバーの読込先があらかじめカスタマイズされている場合を除いて、デフォルトでは Windows Update から取得します。 そのため、インターネットに接続していない環境では正しくドライバーが適用されません。 また、 Windows Update 上にドライバーが存在しない場合も同様です。
- Windows ストア アプリの修復が必要になります。 Windows ストア アプリはハードウェア情報を持っているので、ハードウェアが変わると使えなくなります。
例えばどれかを起動すると、
ここで、「ストアを修復する」を選ぶと修復が行われます。 また、 PC 5 台分までしかライセンス的に許可されていませんので、MAX の 5 台に到達してしまっている場合には、修復ができません。その場合には使っていない PC の登録を削除する必要があります。
この制限があるので、WTG は数多くの PC で利用する事が考えられているため、Windows ストア自体がデフォルトで無効になっており、Windows ストア アプリのインストールができないようになっています。
ベスト プラクティス
将来的に PC リプレースが発生する事を考慮したイメージを使って VHD 起動にするのがお勧めです。 そのためには、ハードウェア依存するサービスやアプリケーションを入れておかないという点ですね。
例えば、USB 接続のデバイス等は利用するアプリケーション側も、USB に接続されていない事を考慮しているので問題ありませんが、PC そのものが持っている機能を前提で使う PC メーカー製電源管理ソフト等はインストールしないようにし、電源管理は OS が持っている機能だけにします。
そうする事で、リースの入れ替え時の移行コスト (ユーザーデータ移行) を下げ、IT 部門としては理想的なリース時期が違っても同じ OS 環境という夢の実現に貢献できると思います。
まとめ
このブログでは設定方法はあえて詳しくは触れません。 まずは、選択肢として採用可能かどうかを考慮いただき、テスト・検証にあたってディスカッションが必要な場合には、TAM (私がプレミア フィールド エンジニアリングに所属していますので)までお声掛けください!