こんにちは! Azure サポート チームの澤田です。
Azure サポート チームでは ARM デプロイメント モデルを利用した Azure 仮想マシンについてのお問い合わせを多くいただいておりますが、Classic である ASM デプロイメントモデルを利用の仮想マシンについてもお問い合わせを頂いています。ARM では新機能が続々と追加されている状況から、サポートチームとしても ARM の利用を推奨している状況ではありますが、事情により Classic を利用しなければいけない場合がある事も認識しています。本日はそんな Classic ユーザーのご利用者様を対象として、Azure 仮想マシンのデータセンター間での移動方法を纏めてみましたので、ご参考下さい。
ASM ARM に関わらず Azure 仮想マシンではリージョンを跨ぐ移動をサポートしていないため、利用しているリージョンを変更する為には、手動で移動させる必要があります。具体的には、VHD ファイルを残す方法で仮想マシンを削除し、VHD ファイルを移動させ、VHD ファイルから新規で仮想マシンを作成する方法です。
なお以下手順での移動対象はクラウドサービスにシングルで構成しているシンプルな仮想マシンでデータ ディスクがアタッチされている環境を想定しています。
目次
まず初めに、手順の項目を以下で説明します。
- 仮想マシンを停止させる
- 仮想マシンにアタッチされているデータディスクの構成を確認する
- 仮想マシンに紐づく vhd ファイルを移動先のストレージ アカウントへコピーする
- 仮想マシンを "特殊化" でバックアップする
- 仮想マシンのエンドポイントや NSG など設定をメモする
- 仮想マシンをクラウド サービスごと削除する
- 移動先のデータセンタで新規クラウド サービスを再作成する
- 移動した vhd ファイルを基に、OS ディスクならびにデータディスクを作成する
- ディスクより仮想マシンを再作成する
手順
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仮想マシンを停止させる
vhd ファイルの移動時に vhd ファイルへの書き込みが発生すると、vhd ファイルの不整合により復旧に失敗する可能性があります。その為、対象の仮想マシンは事前に停止状態にしてください。以下に停止の手順を記載いたします。
1) 管理ポータルへログインし、左メニューより “Virtual Machines" を選択します。
2) 表示された仮想マシンのリストより、今回移動を計画している対象の仮想マシンを選択します。
3) 対象仮想マシンの 概要欄より “停止" を選択します。
4) 同じ概要欄より状態が「停止済み」となった事を確認します。 -
仮想マシンにアタッチされているデータディスクの構成を確認する
今回の作業では、vhd ファイル移動し対象 vhd ファイルよりディスクを作成し、そのディスクを仮想マシンにアタッチします。その際には、Logical Unit Number (LUN) を、オリジナルの仮想マシンと同じように構成する必要があるので、現在の vhd ファイル、ディスクに対応する LUN を、事前に取得しメモします。以下に停止の手順を記載いたします。
1) 管理ポータルへログインし、左メニューより “Virtual Machines" を選択します。
2) 表示された仮想マシンのリストより、今回移動を計画している対象の仮想マシンを選択します。
3) 対象仮想マシンのメニューより “ディスク” を選択します。
4) アタッチされている各 データディスクを選択します。
5) 論理ユニット番号 (LUN) に記載の番号をメモします。 -
仮想マシンに紐づく vhd ファイルを移動先のストレージ アカウントへコピーする
対象仮想マシンで使用している vhd ファイルを、移動先のデータセンタに紐づくストレージ アカウントへ保存します。
vhd ファイルの移動には AzCopy が便利です。以下に AzCopy の使用方法をご説明した Web サイトならびに今回利用するコマンドをご紹介します。AzCopy on Windows を使ったデータの転送
https://azure.microsoft.com/ja-jp/documentation/articles/storage-use-azcopy/--------
AzCopy /Source:<vhd ファイルが保存されている移動元のコンテナへのパス> /Dest:<vhd ファイルを保存する移動先のコンテナへのパス> /SourceKey:key1 /DestKey:key2 /Pattern:<VHD ファイル名>
--------移動元のストレージと移動先のストレージからそれぞれ下記の情報を取得します。※移動先のリージョンへクラシックデプロイメントストレージを先に作成しておきます。
Source:
Dest:
Sourcekey:
DestKey:
Pattern:例:Source の取得には、移動元ストレージアカウントの Blob より、OS とデータ ディスクで使用するそれぞれの vhd ファイルの url を取得します。
1)ホーム画面の 左メニューより “ストレージ アカウント" を選択します。
2) 表示されたストレージアカウントのリストより、移動元ストレージアカウントを選択します。
3) ストレージ管理ブレード内にある Blob Service より “BLOB” を選択します。
4) 表示されたコンテナより “vhds” を選択します。
5) まずは OS ディスクの vhd ファイルを選択します。
6) 表示された概要内になる url (source) をコピーします。
7) 次に、ストレージ管理ブレード内にある "アクセスキー" を選択し、Primary のキー ( Sourcekey ) をコピーします。
8) 次に、メイン メニューから "ストレージ アカウント" を選択、移動先のストレージアカウントを選び、Blob を選択します。もし Blob 内にコンテナーがまだ作成されていない場合は下記の図のように作成します。
9) 該当のコンテナーを選択しコンテナー管理ブレードより "プロパティ" を選択し、URL ( Dest ) をコピーします。
10) 移動先のストレージ アカウントを再度選択し、表示された管理ブレードより "アクセスキー" をクリック、そして Primary のキー ( DestKey ) をコピーします。
11) 以上にて以下の採取が完了しますので、AzCopy のプロパティに当てはめコピーを開始します。Source: https://test12343365.blob.core.windows.net/vhds
Dest: https://test2move.blob.core.windows.net/test2move
Sourcekey: 0tTbAe/KFYB3bBaB0kl3pC5U9MuuEmfDwBMHFrjOWJX2QiZXLpy48mIXrQXUAcbQJPFj2VCS4uhgJYk0eQ4vyQ==
DestKey: GTWKXqJwxlDBJrzA1uQlkK6KBeI9ZjTHg/u11di7JralYwuqJ/r+ng3MN+lKSX7peHCUYQsc5qHKVnqj18KMcA==
Pattern: test1234-os-6485.vhd> AzCopy /Source:https://test12343365.blob.core.windows.net/vhds /Dest:https://test2move.blob.core.windows.net/test2move /SourceKey:0tTbAe/KFYB3bBaB0kl3pC5U9MuuEmfDwBMHFrjOWJX2QiZXLpy48mIXrQXUAcbQJPFj2VCS4uhgJYk0eQ4vyQ== /DestKey:GTWKXqJwxlDBJrzA1uQlkK6KBeI9ZjTHg/u11di7JralYwuqJ/r+ng3MN+lKSX7peHCUYQsc5qHKVnqj18KMcA== /Pattern: test1234-os-6485.vhd
12) 移動先のストレージアカウント Blob 内の指定したコンテナーに vhd ファイルが移動されているか確認します。※ 下記は OS ディスクの vhd ファイルのみ
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仮想マシンを "特殊化" でバックアップする
復旧に失敗したときのために事前に対象仮称マシンのバックアップを取得します。以下に手順を記載します。
1) メインメニューより “Virtual Machine" を選択します。
2) 表示された仮想マシンのリストより、今回移動を計画している仮想マシンを選択します。
3) 対象仮想マシンの タブのより “キャプチャ" を選択します。
4) 適宜、ラベルの定義しますが、"仮想マシンで Sysprep を実行しました" のチェックは外したままにします。
5) OK をクリックし、バックアップを取得します。
6) 念のため、正しくバックアップが生成されたか確認します。
7) メインメニューより 「すべてのサービス」 をクリックし、「イメージ」を検索。VM イメージ(クラシック)を選択。今回作成した仮想マシンのバックアップが存在するか、また、"OS の状態" が "Specialized"(特殊化) で保存されているか確認してください。
今回は、バックアップが正しく作成できているか確認する事が目的でしたので、正しく作成されているようであれば、ウィンドウを閉じてください。
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仮想マシンのエンドポイントや NSG 等、仮想マシンに紐づく設定をメモする
新規で仮想マシンを作成する為に移動前の仮想マシンで設定されていたエンドポイントや NSG 等は引き継がれませんので、設定を確認しメモします。
以下に確認手順の一部を記載します。1) 管理ポータルへログインし、メインメニューより “Virtual Machines" を選択します。
2) 中央ペインの仮想マシンのリストより、今回移動を計画している仮想マシンを選択します。
3) 対象仮想マシンの "エンドポイント" タブや "ネットワーク セキュリティ グループ" タブ等より設定をメモします。 -
仮想マシンをクラウド サービスごと削除する
対象仮想マシンの DNS 設定はクラウド サービスに紐づき登録されていますので、移動に伴い元のクラウドサービスを削除します。VIP はデータセンタ毎に範囲が決められている為、予約 IP を使用していた場合でも引き継ぐ事はできません。
また、今回、対象クラウド サービスには仮想マシンが当該仮想マシンのひとつのみ稼働していますが、クラウドサービスを削除する前に仮想マシンを削除します。
以下にクラウドサービスを削除の手順を記載します。仮想マシンの削除
1) 管理ポータルへログインし、左メニューより “Virtual Machines" を選択します。
2) 表示された仮想マシンのリストより、今回移動を計画している対象の仮想マシンを選択します。
3) 対象仮想マシンの 概要欄より “削除" を選択します。
※削除時にはディスクの削除有無を選択するページがありますが、必ずディスクは残す設定で仮想マシンの削除をお願いします。クラウド サービスの削除
1) 管理ポータルへログインし、メインメニュー上部の “すべてのサービス” より “Cloud Services (クラシック)” を検索します。
2) 表示されたクラウド サービスのリストより、今回移動を計画している仮想マシンが使用しているクラウド サービスを選択します。
3) ページ上部タブより削除を選択し、その際に、"クラウド サービスとそのデプロイを削除します" を選択します。 -
移動先のデータセンタで新規クラウド サービスを再作成する
1) 管理ポータルへログインし、メインメニュー上部の “すべてのサービス” より “Cloud Services (クラシック)” を検索します。
2) クラウド サービスの管理ページ上部より "追加" を選択します。
3) 適宜 DNS 名、リソース グループ名、場所を選択します。※ パッケージ、証明書のオプション項目を設定しません。 -
移動した vhd ファイルを基に、OS ディスクならびにデータディスクを作成する
移動した vhd ファイルをもとに、ディスクを作成しする手順を以下に記載します。
1) 管理ポータルへログインし、メインメニューより “すべてのサービス”より “ディスク(クラシック)”を検索しクリックします。
2) ページ中央部にある “ディスク(クラシック)の作成” をクリックします。
3) 適宜名前を設定し 、場所は移動先のリージョンを選びます。
4) IO の種類( SSD か HDD )が合致していないと、ソース blob を参照するときに適切なストレージアカウントが表示されないので、確認後に参照をクリックします
5) OS ディスクの vhd ファイルが格納されている移動先のストレージアカウント選択します。
6) 次に OS ディスクの vhd ファイルが格納されているコンテナーを選択し、当該の vhd ファイルを選択し“作成”をクリックします。
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ディスクより仮想マシンを再作成する
ディスクより新規で仮想マシンを作成する手順を以下に記載します。
1) 管理ポータルへログインしメインメニュー上部よりすべてのサービスより“ディスク(クラシック)”を検索します。
2) Step 8 で作成したディスクを選択し、"VM の作成" を選択します。
3) 適宜設定を進め仮想マシンを新規で作成します。
※ クラウド サービスの指定には Step7 で作成したクラウド サービスを選択してください。
※ エンドポイントの指定では Step5 でメモした内容を設定してください。
4) 仮想マシンが作成が完了した後に、データ ディスクをアタッチします。管理ポータルへログインしメインメニューより “Virtual Machines” を選択し、表示された仮想マシンのリストから移動した仮想マシンを選択してください。
5) 管理ブレードより “ディスク” を選び、上部タブにある "既存のディスクのアタッチ" をクリックします。
6) 次のブレードが表示されましたら、“必要な設定の構成” を選び、その後データディスクの vhd ファイルが格納されているストレージとコンテナを選択します。
7) 該当の vhd ファイルを選択し、OK をおしたら自動でデータディスクとしてアタッチされます。
以上が手順となります。上記にて作成された仮想マシンが正常に稼働しているかご確認をお願い致します。
上記手順は、シンプルな仮想マシンを移動させる方法のうちのひとつで、すべての仮想マシンで利用できるものではありません。環境に差などがある場合もありますので、動作検証を十分に行ったのちに本番環境への適用をお願いします。