プロ野球のパシフィック・リーグ加盟 6 球団により設立された合弁企業であるパシフィックリーグマーケティング株式会社の使命は、「プロ野球の新しいファンを増やすこと」。
この使命を果たすために、同社では 2012 年から、PC だけでなく、独自の有料動画配信サービス「パ・リーグTV」を運用してきました。そして 2018 年3 月 30 日のシーズン開幕を前にして、「パ・リーグTV」のシステム、サービスを刷新。さらに、「パ・リーグ.com」という新たな情報プラットフォームとなるアプリケーションも併せてリリースするなど、いつでも、どこでも、プロ野球をより深く楽しむことができる環境を、EVCのコンサルティングのもと、システムを刷新し一気に整えました。
新機能「マルチアングル」や美しくなった「3 画面同時視聴」などで、野球観戦の楽しみを拡張
パシフィックリーグマーケティング株式会社 (以下、パシフィックリーグマーケティング) が提供している「パ・リーグTV」は、2018 年 3 月の開幕に合わせて機能を大幅に拡充。1 つのプレーを複数のカメラ映像で確認できる「マルチアングル」機能が新たに追加されているほか、2012 年のサービス開始当初から続く人気機能「3画面同時視聴」の画質が大幅に向上させるなど、大きく進化しています。
これらはすべて「パシフィックリーグマーケティングだからこそ実現できるサービス」だと、マーケティング室 室長 CMO 荒井 勇気 氏は話します。
「たとえばマルチアングル機能は、各球場内に設置されている複数のカメラを使っています。これは、6 球団の共同出資企業である当社だからこそ活用できる資産です。仮に “選手のフォームやクセなどを相手球団に研究されやすくなってしまう” と、ファンの方が心配されたとしても、6 球団横並びで提供しているサービスですから、一切の不公平はありません。純粋に選手たちのプレーを楽しんでいただきたいと思います。」
そしてもう 1 つ、大きなポイントとなるのが、スマートフォン用のアプリケーション「パ・リーグ.com」のリリースです。
今まで、試合映像は「パ・リーグTV」に、各球団および選手の詳細を追ったテキスト情報は「パ・リーグ インサイト」という Web サイトに分かれて掲載されていました。こうして分散されていた情報を、「パ・リーグ.com」に集約。スマートフォンから、簡単にパ・リーグのすべてを楽しむことができるように整えられたのです。
「パ・リーグTV」のこうした変化を支えているのが、株式会社EVC (以下、EVC) が独自に開発し、「パ・リーグTV」のサービス開始当初から採用されている動画管理サービス「Bizlat」(機能拡張版)であり 、EVC のコンサルティングの下、映像配信プラットフォームとして活用しているマイクロソフトのパブリック クラウド サービス「Microsoft Azure」です。
Azure には、「Azure Media Services」や「Azure Content Delivery Network (以下、Azure CDN)」など、映像のライブ ストリーミングや VOD (Video On Demand) サービスに適した機能が揃っており、非常に簡単な操作で動画を管理できる Bizlat と組み合わせることで、非常に効率的で利便性の高い映像配信環境を整えることができるようになっています。
アマチュア スポーツにも活用しやすい、簡便で効率的な動画配信システムを実現
パシフィックリーグマーケティングが、Bizlat (機能拡張版) とAzure の採用に踏み切った理由は、主に以下の 4 つです。
- 2020 年に Flash のサービスが終了する前に HTML5 に切り替える
- クラウド サービスを冗長化して「止まらない」サービスを実現させる
- 長年頭を悩ませてきた CDN のトラブルから脱却する
- 「パ・リーグ.com」に必要な、メディア プレイヤー機能までサポートしている
「パ・リーグTV」の前身となる「パ・リーグ ライブTV」の頃からシステム環境を支え続けてきたマーケティング室 テクニカル・アドバイザー 堀内 修一 氏は次のように説明します。
「『パ・リーグTV』では、Flash と HLS の 2 つの規格を使って映像を配信していましたが、2020 年末をもって Flash のサービスが終了するため、HTML5 への移行を急いでいました。さらに、万が一にもサービスが止まらないように、インフラの冗長化を以前から検討していたのです。そうして、新しいクラウド サービスを検討していた私たちに Azure を提案してくれたのが、長年『パ・リーグTV』を一緒に支えてきてくれた EVCさんでした。
Azure Media Services という機能を活用すれば、PC やスマートフォンなど、デバイスごとに必要な形式の動画ファイルが自動で生成されます。さらに動画の高速配信を支える Azure CDN まで用意されていることも大きな魅力でした。
実はこれまで、CDN が原因となるトラブルが頻発していたのですが、複数社のシステムが関わり合っていたこともあり、どうしても原因を特定できず、もどかしい思いをしていました。しかし、CDN までマイクロソフトのサービスで統一されれば、万一のトラブル時にも、問題の特定が容易になるという期待がありました。しかも、EVC さんには Azure 上で Bizlat を安定稼働させてきた多くの実績があります。私たちの求めるクラウド サービスとして、必要十分な条件がそろっていたのです。」
さらに、IT統括部 部長 CDO 佐藤 直記 氏は、「Azure は当社のビジョン実現に向けて、非常に大きな価値を持っていた」と強調します。
「Azure では、動画のファイル形式を自動変換できるだけでなく、再生プレイヤーまで提供されています。『パ・リーグ.com』にこのプレイヤーを採用することで、『パ・リーグTV』用の映像を、そのままリアルタイムで提供できるようになりました。これは、本当に素晴らしいことだと思います。
当社では、『プロ野球の新しいファンを増やすこと』という使命のほかに、『プロ野球界、スポーツ界の発展を通して、日本の社会全体を明るく元気にしていうこと』というビジョンを掲げています。ですから、私たちの映像配信システムを、日本のスポーツ界全体に役立てて行きたいと願っています。過去にも某女子プロゴルフ大会の中継に活用いただいた事例があるのですが、今後は、さらに手軽に、ほかのスポーツ界……プロ、社会人から青少年スポーツまで、さまざまな大会の中継に活用いただけるようになったと思います。これは本当に価値のあることです。」
2 か月足らずの短期構築で迎えた開幕戦。「配信トラブル 0」を達成!
上述のようにパシフィックリーグマーケティングが求めるすべての要件に適合した Azure ですが、その検討には「慎重を期した」と、荒井 氏は振り返ります。
「大切なことは、目の前の課題を解決することだけではありません。数年前にスマートフォンが急速に普及したように、お客様の視聴環境は今後も刻々と変化していくでしょう。そうした変化に対応できなければ意味がないのです。そのために、EVC さんによる Azure の提案だけではなく、複数の提案を詳細に比較して、検討を重ねました。」
そして、「この提案がベストである」という判断の下に Azure の採用が決まったのが、2018 年 1 月のこと。シーズン開幕までわずか 2 か月しか残っていませんでした。しかし、プロジェクトはスピーディーに進行。「これまで、Azure 上で Bizlat を稼働させてきた経験から、成功を確信していた」という EVC 代表取締役社長 國分 秀樹 氏の言葉通り、期日としていた 3 月 23 日にサービスのリリースを迎えています。
荒井 氏は「今年の開幕戦は、忘れることができない」と笑顔で振り返ります。
「これまで毎年、開幕戦の日は『映像が止まってしまう』といったトラブルへの対応に追われて徹夜するのが常でした。しかし、今年は違いました。こんなに短期間に構築したシステムにも関わらず、トラブルは 0 件。本当にいい思い出になりました。」
パ・リーグTV とパ・リーグ.com を大きく成長させるために、機能とサービスを絶え間なく向上
パシフィックリーグマーケティングが目指すサービスの形は、まだ完成したわけではありません。マルチアングルの映像配信は、現在 3 球場のみとなっていますが、今年中には 6 球場すべてから配信できるようになる予定であると言います。また、二軍の試合も、今後は積極的に配信していく方針にあると、荒井 氏たちは声を揃えます。
最後に荒井 氏は次のように締めくくります。
「今回のシステム更新を経て、『パ・リーグTV およびパ・リーグ.com を、さらに大きなメディアへと成長させる』という目標が、明確に描けるようになりました。過去のシステム環境では、“どうやってこの不具合を解消するか” というリアクティブな対応に追われて、数年先のビジョンを描く余裕がありませんでしたからね。もちろん、今のシステムがベストだとは思っていません。まだまだ改良を続けていきます。プロ野球ファンの皆様のために、プロ野球界のために、そして日本のスポーツ界全体のために、さらに貢献できるサービスへと成長させていきたいと思います。」
ソリューション概要
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お客様プロファイル
パシフィックリーグマーケティング株式会社は、ビジョンは「プロ野球界、スポーツ界の発展を通して、日本の社会全体を明るく元気にしていくこと」。ミッションは「プロ野球の新しいファンを増やすこと」です。これらビジョンとミッションの実現を念頭に、プロ野球含むスポーツが持つ新しい価値を、日本の社会へ提供し続けられるように努めています。
https://www.pacificleague.jp/
株式会社EVC
https://www.evc.jp/
「株式会社EVCは、お客様のご要望に合わせたマルチデバイス向け映像配信システムの企画から構築までワンストップでお応えいたします」
2003年に創業し、映像管理・配信システム「Bizlat」を提供。2013年にMicrosoft 「Windows Azure」クラウドサービス上で「Bizlat on Azure」を提供開始するなど、映像に特化したSIビジネスを展開。