(この記事は2017年11月7日にMicrosoft Partner Network blog に掲載された記事 The secret to building IP: It’s easier than you think の翻訳です。最新情報についてはリンク元のページをご参照ください。)
クラウド コンピューティングの人気が高まっていることから、パートナー様の競争は激化しています。このような状況にあってさらなる差別化を図るには、特定の業界内で独自の専門サービスを提供する必要があります。そして、ビジネスを差別化するにあたって最も収益性の高い方法は、知的財産 (IP) を構築することです。
パートナー様の大半はパッケージド IP の有望な点を理解してはいるものの (2017 年 6 月に MDC Research が実施したクラウド プラクティス開発スタディによると、経常収益ベースの粗利率は平均 70%)、一部のパートナー様はまだ投資する準備ができていないと感じています。しかし、そのビジネス チャンスは非常に大きいため、本格的にご検討されることをお勧めします。またこれとは別に、自覚のないまま IP を提供していて、有償サービスとしてビジネスを展開する準備が整っていないパートナー様もいらっしゃいます。
IP を構築することで、より包括的なサービスを提供すると共に、顧客維持率を高めて真の顧客生涯価値を生み出して、クライアントにとって唯一の存在になることができます。経営者にとっては、企業価値が劇的に高まるというメリットもあります。最近の調査によると、所有する IP の大部分を収益化しているパートナー様は、そうでない企業と比較して企業価値が 5 ~ 10 倍になることが判明しています。
では、どのように始めれば良いのでしょうか。
自社の IP を発見する
まずは、既に所有している隠れた IP を探し出して、それに対するイノベーションを継続します。顧客からの要望を精査し、特に要望の多いソリューションを見極め、その機能をパッケージ化することを検討します。専門的な製品に変換できる、再現可能な要素を特定しましょう。
そのためには、ソリューションを製品化する機会を積極的に模索する必要があります。重点的に取り組む分野を 1 つか 2 つに絞り込んでトライアル プロジェクトを立ち上げ、その分野のターゲット顧客のプロファイルを作成することで、独自のソリューションを構築できるようにします。
視野を狭めやしないかと不安に思う必要はありません。ある機能を自動化する数行のコードであっても、ターゲットとなる市場にとって特別な価値を生み出すなら、りっぱな IP です。
ソリューションを完全に差別化するために、サービスを特定業種に特化させる方法や市場投入のアプローチを検討してください。
パートナー様のコア コンピテンシーの範囲外であるからというだけで、ビジネス チャンスを無視しては損です。リソースが限られている場合は、IP 開発の提携やアウトソーシングを検討してみましょう。そうすることで、顧客に対しても自社にとっても大きな効果が期待できます。
RedPixie のアプローチ
ロンドンに拠点を置くマイクロソフト パートナー RedPixie (英語) は、2 つの IP ソリューションの構築に成功しました。このうち新しい方のソリューションは、IoT デバイスから心拍数や体温のデータを追跡する、医療用のウェアラブル テクノロジです。これは Project WellWatch というスケーラブルな Azure IoT 医療サービスであり、リアルタイムの分析結果をデータ ウェアハウスに抽出して、計算、機械学習、インサイトの取得を行います。収集される情報は、問題発生の前兆を見極めるためにも使用されます。生死にかかわる状況では、デバイスから病院に直接情報を送信することもあります。
もう 1 つのソリューションは、一部の顧客が Microsoft Excel を使用して、監視されていない危険性の高いデスクトップ環境でミッションクリティカルな基幹業務プロセスを実行していることに気付いたことから生まれました。そのような顧客の状況から、Excel 自体を使用せずにコードから Excel ワークブックの計算を行うバックグラウンド処理エンジンを開発するというビジネス チャンスを見いだしたのです。同社はワークブックを処理するために Azure Calculation Engine (英語) というスケーラブルな Azure ベースのアーキテクチャを構築し、顧客が事業運営に専念できるようにしました。
RedPixie は、顧客の基幹業務部門の経営幹部と協力して、カスタムのパッケージ ソリューションを実装しました。RedPixie の顧客にとってこのソリューションは、PC ベースの Excel コンピューティング グリッドを実行するよりも低コストで管理しやすく、Azure のスケーラビリティによって主要なビジネス プロセスの実行時間は最大で 88% も短縮されました。
独自の価値を提供する
自社の IP を定義したら、再現可能なメソッドやプロセスに変換する必要があります。ただし、イノベーションを中断してはいけません。新しいクラウド コンピューティングの世界では、独自のソリューションも短期間のうちにコモディティ化したり、新しいソリューションに取って代わられたりすることがあります。
RedPixie の最高デジタル責任者を務める Mitchell Feldman 氏は、この状況を「デジタル戦争」と表現します。「飛行機の操縦に似ています。正しく操縦すれば飛び続けますが、何もしなければ墜落します。」ここで重要なのは、顧客生涯価値に着目すること、成功事例を公開すること、そして顧客サポートやビジネス展開について顧客が考えもしないようなアイデアを絶えず提示し続けることです。
そして引き続き、自社の IP 中心のソリューションを他の業種の同様のユース ケースに拡張する道を模索して、リーチを拡大します。IDC 電子ブック『モダン マイクロソフト パートナー シリーズ』 のパート 2 では、ある垂直市場におけるコンピテンシーを発展させることで、別の垂直市場のビジネス チャンスを発見する方法について説明しています。場合によっては、戦略、組織構造、開発プロセス、販売プロセス、基盤となるコードを別の垂直市場向けに簡単に変換できることもあります。
また、自社の IP を構築することで、チャネル パートナーを通じて自社ソリューションを販売するというビジネス チャンスが開かれる可能性もあります。パートナー ネットワークに目を向け、バンドルできる補完的なソリューションを探して、独自のソリューションを完成させてはいかがでしょうか。
皆様は、ビジネスを差別化し、収益性を高めるために IP をどのように活用していますか。マイクロソフト パートナー コミュニティ (英語) で皆様の事例をご紹介ください。