Posted by Word チーム
8 月 16 日
今日はタッチ機能について、Word チームのプログラムマネージャーである Michelle Lisse がお話しします。
近年はタッチ デバイスが隆盛を極めています。これまで、Word ではタッチ方式については限定的にしか対応していませんでした。しかし今回はその範囲を拡げ、Windows 8 で Word が輝けるよう、タッチ式特有の機能について機能向上を図りました。
この記事では、今リリースの Word でタッチ方式による編集を強化するために行った変更内容についてお話しします。特別なタッチモードのリボンやコンテキスト メニューなど、Office 全体におけるタッチ機能の機能向上については、「Clint Covington’s blog post about touch across Office」をお読みください。また、タッチ機能の活用について、さらに詳しくお知りになりたい場合は、「post on the new reading mode」をご覧ください。この機能はタッチ方式を念頭に根本的に新しく設計されています。
文章の入力については、私たちは他に見られない困難な課題に直面しました。Word は、過去数十年にわたってマウスやキーボードを使用する操作にきめ細かく対応してきた強力なアプリケーションです。今リリースでの私たちの目標は、マウスやキーボードを使用していたユーザーの生産性を損なわずに、一般的なタッチデバイスでの編集作業を可能にすることでした。すべての機能をタッチ式対応に書き直すことはできませんでしたが、基本項目をカバーすることはできました。
選択方式について
私たちが最初に取り組まなければならないことの 1 つが、選択方式をタッチ式に作り替えることでした。マウスによるモデルは何年にもわたって慎重に最適化されてきましたが、これを単にタッチ式に置き換えるわけにはいきません。タッチ式デバイスではホバー状態がないことを考慮しなくても、タッチ式に対応するには、根本的に異なる概念を実体化する必要に迫られます。
少し具体的な例を挙げましょう。何らかのポインティング デバイスを持っていると想像してみてください。このデバイスからは、ポインターが押されたことのメッセージ、次にドラッグしたことのメッセージ、最後にポインターが放されたことのメッセージが報告されます。このとき、どのような処理が起きると思いますか?たとえば、このポインティング デバイスがマウスの左ボタンであった場合には、ドラッグした範囲の選択をすることを期待するでしょう。しかし、ポインティング デバイスが指である場合は、文書のスクロールを期待することでしょう。
おわかりのように、このことは Word の既存のマウス用のコードはタッチ式デバイスに単純に再利用できないことを意味しています。私たちは、過去数十年にわたって慎重に考え抜いた方式から最も重要な要素を抽出し、まったく新しいモデルの下でこれを検討し直す必要に迫られました。このプロジェクトのために、文書のナビゲーション操作からさまざまなメディアのキャンバスでの選択方法まで、すべてのものを改めて詳しく調べ直す必要がありました。
最終的には、ピンチによるズームとドラッグによるパンを使用する操作モデルを構築しました。Word の一部のビューには、文書の内容がウィンドウに的確にフィットするよう調整する高度なレイアウト機能も用意しました。これらのビューのため、ピンチ操作によって単に内容を直接拡大縮小することはできませんでした。その代わりに、新しいズームオーバーレイ機能を作成し、変更を確定する前に新しいテキスト サイズをプレビューできるようにしました。
また、新しいテキスト選択ハンドルを作成して、キャンバスでテキスト選択を行って調整できるようにしました。そして Excel チームと協力してこの選択ハンドルの機能を拡張して、テーブルのセル、行、列を選択できるようにしました。
図に関しては、ライブ レイアウト機能と、グラフや SmartArt などの複雑な図も操作できる機能を追加しました。また、図の上に表示されるハンドルも大きくして、図のサイズを変更や回転を行うときの選択操作をしやすくしました。
さらにキャンバス上の UI ウィジェットにも改善を加え、タッチデバイスでの見やすさと使いやすさを向上させました。たとえば、セクションを展開したり、たたんだりすることのできる新機能を追加しました。マウスとキーボードを使用しているときには、見出しの上にカーソルを重ねたときにのみボタンが表示されます。タッチ式の場合はホバーという機能がないため、ユーザーがタッチデバイスに触れていることが検出されたときには、常にボタンが表示され、使用できるようになります。
解決しなければならないことは多数あり、それらの問題はすべてタッチ デバイスを操作するために必要不可欠なものでした。私たちが基本を正しく理解していないと、タッチデバイスで何もできなくなります。しかし基本を正しく反映すれば、操作は素早く、滑らかで、自然なものとなります。そしてこれらがすべて解決すれば、ユーザーはマウスを使用するときと同様にタッチデバイスを意識しないで使用できるようになります。
キーボード入力の機能向上
私たちが機能向上を行ったもう一つの分野は、ソフト キーボードの操作性です。Windows 7 の Office 2010 にはソフト キーボードが付属しており、ドキュメントの前面に表示させることができます。このモデルは文の修正には優れていますが、長い文章の入力などには適していませんでいた。
Windows 8 では、このキーボード機能でさまざまな操作が可能になりました。Word がこのキーボードと通信できるようになったため、長い入力作業の際の操作性が改善されました。現在、Word はキーボードの場所を正確に判断し、キーボードの上方に文書の内容が自動的に配置されるよう調整します。これによって、文書を手作業でスクロールしなくても、長い文章を入力できるようになりました。
http://www.youtube.com/watch?v=O_9uLROmXLQ&feature=player_embedded
障害の排除
先にお話ししたように、Word には根本的にマウスを念頭において設計されたツールが多数あります。一部のツールでは、マウスカーソルが他のツールに変化し、ホバー状態やマウス特有のコードと深く関連していました。
このようなマウス特有のツールはマウスとキーボードを使用する場合の操作性には優れていますが、タッチデバイスでは実にどうしようもありません。ボタンをプッシュしても、そのツールから抜け出す方法がありません。いくつかの例として、図形の挿入、ビューの分割、罫線を引く、蛍光ペン、書式のコピー/貼り付けなどがあります。
私たちはこれらの各ツールを詳しく調べて、解決し、すべての問題点を排除しました。現在では、タッチ方式による図形の挿入では、図形はページに直接配置されます。あるいは、書式のコピー/貼り付けをプッシュすると、単語をタップして書式を貼り付けることができます。このように、今では「マウスのみ」という落とし穴に陥ることなく、タッチ デバイスで自信を持って Word をお使いいただけます。
まとめ
それでは、タッチ デバイスでの文書の編集をサポートするために私たちが行ってきた改善項目に関するまとめとなりますが、私たちは、文書に関する処理を完全なものにして、現在行われている基本的な編集操作を可能にし、将来のために強固な基盤を築くことに重点を置いてきました。
タッチ機能の担当者は (そのほとんどをこの写真で紹介します)、タッチ デバイスを使用したときの Word の処理を高速かつ滑らかなものにするために、懸命な開発作業を行ってきたのです。